シンギュラリティ実験ノート

購入した1000ドルPCで何がどこまでできるのか実験した記録です。

1000ドルあたりのPCの進化をグラフにプロットする

1000ドルあたりのPCの能力進化の歴史をグラフにプロットするとどうなるか。レイ・カーツワイル氏が作成したグラフが下記の図である。このグラフは彼の著書「シンギュラリティは近い」に掲載されており、このグラフをベースに彼はシンギュラリティの期日を2040年代中頃と推計している。

1000ドルあたりのPCの能力の進化

そういう意味で非常に大事なグラフなのだが、なにせ字が小さくて見づらいのである。今回は自分でこのグラフを作成して私なりに考察してみたので、お付き合い頂きたい。

 

過去30年のPCの進化(私の1000ドルPC購入履歴)

私はこれまで1000ドルPC(10数万円で購入できるPC)をおよそ10年周期で購入してきた。個人情報で恥ずかしいが、まずはこれをプロットしたグラフを掲載する。

1993年から2023年までに私が購入したPC
西暦 PC機種 CPS 備考
1993 FMV486  10^{8} Wikipediaの80486DXの性能からの推測値
2003 G4 iBook  4 \times 10^{9} WikipediaPower Mac G4からの換算値
2012 Mac mini Late2012  8 \times 10^{10} 私のノートのメモから(出典不明です。すみません。)
2023 UM790 Pro  10^{13} GPU理論値8TFLOPS+CPU仮定値2TFLOPS

 

縦軸は対数にしている。グラフがほぼ直線となることから、一定の比率で指数関数的に性能が向上してきたことが分かる。30年間で 10^{5}(10万倍)の性能向上である。

2045年までのコンピューティングの進化を予測

次に「シンギュラリティは近い(エッセンス版)」(以下エッセンス)の中でカーツワイル氏が予測しているPCの性能値を追加してプロットする。ここで2023年の点はUM790 Proではなく、NVIDIAのJetson Orin AGXとしている。米国価格で$1999で性能値は200TFLOPS。これを1000ドルPCに換算して100TFLOPSとした。G4 iBookもデータがなかったのでPower Mac G4の20GFLOPSを1000ドルPCに換算した値である。CPSは1秒間あたりの計算回数である。1FLOPSは1CPSMIPSはmillion instructions per seccondの略なので1MIPS 10^{6}CPSとした。

1000ドルあたりのPCの進化予測
西暦 PC機種 CPS 備考
1993 FMV486  10^{8} Wikipediaの80486DXの性能からの推測値
2003 G4 iBook  4 \times 10^{9} WikipediaPower Mac G4からの換算値
2012 Mac mini Late2012  8 \times 10^{10} 私のノートのメモから(出典不明)
2023 Jetson Orin  10^{14} Jetson Orin AGXからの換算値
2028 (予測値)  10^{16} エッセンスP89に記載あり
2031 (予測値)  10^{17} エッセンスP106に記載あり
2045 シンギュラリティ  10^{26} エッセンスP106に記載あり

 

以前にも書いたが、 10^{16}CPSは人間の脳をシミュレートするのに十分な能力と言われる重要な値である。書籍では2025年に 10^{16}CPSを1000ドルPCが達成するとなっているが、グラフが歪になるので勝手ではあるが2028年に補正させてもらった。

こうして見ると、縦軸を対数にしてもグラフは指数関数的に増加し、傾きが徐々に大きくなっているのが分かる。まずこの傾きを有名なムーアの法則の式を使って分析してみようと思う。ムーアの法則半導体の集積率が2年ごとに2倍になることから、Pを倍率、nを年数とすると以下のように表現される。

 P=2^{n/2}

性能が2倍になる年数を変数aとすると下記の式となる。

 P=2^{n/a}

私の1000ドルPC購入履歴では30年で性能が10万倍であった。つまりP= 10^5、n=30として上記の式に代入し、変数aを求めることになる。

10^5=2^{30/a}

\log_{2}10^5 = \dfrac {30}{a}

これを対数の公式を使って頑張ってaを求める。長くなるので私が計算した結果だけを記すと、1.8年。つまり1年と9ヶ月半で2倍となる。この速度は加速していき、2023年からの8年では0.8年(9ヶ月半)で2倍、2031年からシンギュラリティの2045年までの14年は0.47年(約半年)で2倍という結果になった。

 

考察

今回、新しいPCを買う時、「最近のCPUは変化が早いなぁ」と感じていたのだが、それもそのはずである。私の計算が正しければ、性能が2倍になるのに1年もかからない時代に今や突入しているのである。今後10年後(2034年頃)の1000ドルPCは、人間の脳の1000倍以上の能力を持っているかもしれない。そんなPCを我々は何に使うのだろうか。ゲームだろうか。私はやはりこのレベルを使い切ろうとすれば、AIになるのだと思う。PC自体も今のような形ではなくなるのではないか。PCはAI専用機となり、スマホのように常に身に付け、我々をサポートしてくれるような存在になっているのかもしれない。

今回作成したグラフを眺めていると、そんな妄想が頭の中で繰り広げられ、自分としてはこれだけでで十分楽しめる。今後は最新のPCの性能を定期的にサンプリングし、グラフに追加していく。新しい発見などあれば記事にしていきたい。