シンギュラリティ実験ノート

購入した1000ドルPCで何がどこまでできるのか実験した記録です。

The Singularity Is Nearer: When We Merge with AI を読書中

以前の記事で紹介した「The Singularity Is Nearer: When We Merge with AI」の英語原本が、6月25日に発売開始となった。AmazonからKindle版をダウンロードしてKindleの翻訳機能に頼りながら少しづつ読んでいる。

本当は、生成AIに本のテキストデータを渡して要約させたものを読みたいのだが、PDFに変換したりするとKindle規約違反になる可能性があるようなのでそれはしていない。

読み終えていないので感想はまだ書けないが、気になっていたコンピュータ計算の価格性能グラフについて少しだけ書きたい。

1939年から2023までのコンピュータ計算の価格性能グラフ

私が最も興味があったのは、カーツワイル氏が作成した下記グラフについてだ。

 

 

本の購入前は、いわゆる1000ドルPC当たりのコンピュータ計算能力のグラフと思っていたが、実際は2023年の単位ドル価値換算で各時代で最も価格パフォーマンスの高い演算装置をプロットしていたのだ。1ドルの価値は、1982-1984年の値を100としたCPI(Consumer Price Index)を使って補正しているようだ。

正確を期すため、本に掲載されていたグラフを引用する。

 

 

カーツワイル氏はどうしてこれまでのように1000ドルPC換算の性能値ではなく、単位ドル当たりの性能値に変更したのか。1000ドルPCにこだわっている私としては少し悲しいが、考えてみると仕方がないことだというのが分かる。

80年以上の長いスパンの中では、高性能な演算装置とは大型コンピュータからミニコン、PC、CPU単体、GPUボード単体というように移り変わっているのだ。実際のところ本グラフの2017年にプロットしている演算装置は、AMD RADEON RX 580というGPUボード、2021年、2023年にプロットしている演算装置はGoogle Cloud TPUとなっている。2024年にプロットするとしたら多分GroqのLPUあたりになるのか。そうなるとこれらの性能をわざわざ1000ドルPCに換算するよりも、単位ドル当たりの性能値にした方が確かに自然ではある。

AIの能力の進化速度を計算する

グラフは縦軸対数でほぼ直線となっていることから、このグラフの傾きから性能が10倍になるのに要する期間を計算できる。

(2023-1939) \div 16 =5.25

誤差もあるのでざっくり言えば5年で10倍、10年で100倍の性能アップとなる。この性能アップは過去84年間続いていることから、今後もこの速度での性能アップが期待できる。この数字の意味について考えていた時、私は、ソフトバンクグループの孫正義氏が言っていた言葉を思い出した。2023年10月4日のSoftBank World 2023の講演で孫さんはこう言っていた。

 

今後10年以内にAGIが実現する。

AGIは人類の叡智の10倍。

AGIは、Artificial General Intelligence(人工汎用知能)の略

今後20年以内にASIが実現する。

ASIは人類の叡智の10,000倍

ASIは、Artificial Super Itelligence(人工超知能)の略

AGIとASIの説明はソフトバンクこちらのページに説明があるので興味のある方は見てもらいたい。孫正義氏の講演の動画もリンクされている。

 

 

この話を聞いた時はよく分からなかったが、演算装置の能力が、5年で10倍、10年で100倍、20年で10,000倍性能アップするということを前提にすると、孫さんの話が理解できる。

ハード(演算装置)の性能は人間に例えれば脳のニューロンの性能そのものだ。この性能アップ分だけAIは賢くなるはずだ。

孫さんが20年以内で10,000倍という具体的な数字を上げて説明していたのは、おそらく自分なりにコンピュータのチップの性能向上をプロットし、計算して把握していたのだと思う。

この計算結果はカーツワイル氏が作成した最新のグラフから求めた結果、10年で100倍、20年で10,000倍と見事に一致する。孫さん、さすがである。

ここで、AGIが人類の叡智の10倍とするなら、10年以内ではなく5年以内と言うべきではないかと疑問に思うかもしれないが、「AGIが10年以内というのは保守的に見積もった数字で本当はもっと早いと思っている」と孫さんが確かおっしゃっていたので、心の中では5年以内と思っているはずだ。

シンギュラリティの到来

「The Singularity Is Nearer」を読み終えていないので確かなことは言えないが、シンギュラリティの到来時期に関するカーツワイル氏のスタンスには今も変化はなさそうだ。

私は前作の「シンギュラリティは近い」の中でカーツワイル氏が説明する2045年にシンギュラリティがくるという根拠の部分が今ひとつ肚に落ちていなかった。

しかし今回のカーツワイル氏作成の新たなグラフと、孫さんのAGI、ASIの到来時期の説明を組み合わせることで、ようやく自分の肚に落ちた気がする。

現在のAIの10,000倍も賢いAIが現れるとすれば、何かが起きるだろう。その先に何があるのかは分からないが、自分のこの目で見てみたい。