3年ほど前にCASIOの光ナビゲーションキーボードLK520を購入した。ピアノが弾けるようになりたいと思い練習したのだが、初心者用の曲を何曲か練習しただけで挫折してしまい、これまで部屋の片隅でホコリを被っていた。
LK520にはMIDI機能が搭載されている。ピアノとしてではなくMIDIファイル再生マシンとしてなら私にも活用できるのではと思い、SMF(Standard MIDI File)をLK520で再生するため久しぶりにMIDIと格闘した。その結果を私自身の備忘録の意味を含めてブログにまとめておきたい。
1.SMFを入手する
ネットで検索すると様々なサイトがある。私は以下のサイトから入手した。
有償でよければYamahaが運営するヤマハミュージックデータショップで購入できる。MIDI定額データサービスを使うと1ヶ月550円で5曲までダウンロードできる。様々なジャンルの曲が用意されているがピアノ演奏用の曲が多い。
バンドの演奏を再現したい場合で昔の曲でよければお勧めなのがMIDI WORLDだ。昔のサイトで今は更新されていないが1970年代、80年代の曲が多数登録されていてかつ無償でダウンロードできる。私のようにこの頃の曲しか知らない人にはこれで十分だ。
2.LK520単体でSMFを再生する
LK520の取扱説明書にも書かれているので要点のみ記す。
- USBメモリのMUSICDATフォルダにMIDIファイルを保存する
- USBメモリをLK520のType A端子に装着する

- ダイヤルを回して曲を選ぶ
ファイル名昇順に表示されるので曲を選んで再生ボタンを押す
気に入った曲があればLK520のユーザソングエリアにコピーすることでユーザソングとしてすぐに再生できる。
使用される音源はGM音源になる。それなりの品質の音が出るのでこれでも十分楽しめるが、例えばトランペットの音を別の音色に変更したい、あるいはLK520にある別のAIX音源で再生したいとなるとPCが必要になる。
3.PCとLK520をMIDIで繋いでSMFを再生する
いちいちUSBメモリにコピーするのは面倒なのでPCから直接再生したくなる。この場合はDAWが必要になる。私は「ダウ」と読んでいるがDigital Audio Workstationの略で、簡単に言えば音楽制作を行うためのソフトウェアだ。
これも様々なソフトがあるがちょっと試してみたいという方には無償で使えるDAWとしてCakewalk Sonarをお勧めする。3年ほど前にも少しだけ使ったことがあったが当時はCakewalk by BandLabというソフト名だった。最近Cakewalk by BandLabはサポートが打ち切られたようで、後継としてCakewalk Sonarが無償でサポートされるようになった。
Cakewalk Sonarのインストール方法はこちらのサイトに詳しく書かれている。
Cakewalk SonarはWindows専用ソフトである。MacユーザはそもそもGarageBandが無償で提供されるのでそちらを使えば良い。ただしGarageBandでSMFを読み込むとGM音源がMacのGM互換音源に変換されるため一部の演奏で調整が必要になる可能性がある点に注意が必要。
Cakewalk Sonarを立ち上げてSMFを読み込むと以下のような画面になる。音楽編集をしようとすると難しいが、SMFを再生するだけならそれほど難しくはない。

ビリージョエルの「Just the Way You Are」を読み込んだ画面
PCとLK520の接続にはUSBケーブルを使い、LK520の「USB Micro B端子」側に接続する。端子の上に「TO HOST」と書かれていて、MIDI上ではPCがHOST、LK520がデバイス側となる。MIDIデバイスとしてPCに「CASIO USB-MIDI」が認識されれば正常に接続されていることになる。
MIDIデバイスが複数接続されている場合には、Cakewalk Sonarの環境設定(「編集」メニューにある「環境設定」を選択)でMIDIデバイスとして「CASIO USB-MIDI」を選択しておくこと。
これで再生ボタンを押せばLK520のスピーカーから音楽が再生される。この場合も標準ではGM音源で再生される。Cakewalk Sonarにはソフト音源をインストールできるので特定のチャネル(楽器)をソフト音源に変更することもできる。
4.LK520のAIX音源を活用してSMFを再生する
LK520にはAIX音源が搭載されている。少し前まではAIX音源はハイクレード機種(CTX-5000等)のみサポートされていた音源だったが、LK520の販売あたりから入門機(LK520クラス)にも搭載されるようになった。せっかく搭載されている音源(ハードウェア音源)があるなら活用したいと思うのが人情だ。しかしAIX音源を使うことは一筋縄ではいかなかった。ネットで調べても有用な情報は得られなかった。AIエージェントに教えてもらいながら、LK520のマニュアルとCakewalk Sonarのマニュアルを読み込み試行錯誤の末になんとか希望するAIX音源で再生できるようになった。その手順を以下に記す。
4-1.前提知識
カシオのMIDIインプリメンテーションマニュアルに音色の変更方法が記載されている。以下の手順でデバイスにMIDIメッセージを送信する。
- バンク・セレクトメッセージで音色バンク番号を切替
・MSB値とMLB値の組み合わせで指定 - プログラムチェンジメッセージで音色を選択
・プログラム番号を指定
各音色のMSB値、MLB値、プログラム番号はLK520の取扱説明書に記載がある。
4-2.インスツルメント定義の追加
MSB値、MLB値、プログラム番号を画面から指定できるようにするにはインスツルメント定義の追加が必要だった。初期状態でGM音源、Roland GS、Yamaha XGのみが定義されているため、ここにcasio LK520を追加する。
インスツルメント定義は環境設定の中にあり、定義ボタンを押すと表示される。

「インスツルメントの名前と定義」という画面が表示される。

ここで以下を追加する。
- パッチ名として「AIX」を定義
右側ウインドウで「パッチ名」を右クリック→「新規パッチ名リスト」を選択→パッチ名「AIX」を追加 - インスツルメントとして「casio LK520」を定義
左側ウインドウでインスツルメントの上で右クリック→追加インスツルメントを選択→インスツルメント「casio LK520」を追加 - 各バンクのパッチ名リスト(バンク番号とパッチ名)を定義
バンク番号は内部的にMSB×128+LSBで扱われる
MSB=32、LSB=0の場合は32×128+0=4096となるため「4096=AIX」と入力
MSB=33、LSB=0の場合は32×128+0=4224となるため「4224=AIX」と入力
4-3.インスツルメントの選択
MIDIの条件指定ウインドウは赤枠部分になる。

赤枠部分の上部にチャネル、バンク、プログラムの指定欄がある。図の場合は11チャネル(トランペット)の条件を表しており、チャネル(C)が「11:<default>(GM音源)」、バンク指定(B)が「なし」、プログラム番号(P)が「Trumpet(56)」になっている。

11チャネルのGM音源「トランペット」をAIX音源の「トランペット1」に変更したい場合は、チャネル(C)を「11:casio LK520」、バンク指定(C)を「4096-AIX」、プログラム番号(P)を「56」で選択すればLK520のAIX音源トランペット1で再生される。
4-4.注意事項と制限事項
注意事項
インスツルメント選択の前に環境設定→インスツルメント定義→インスツルメント定義の割当で、変更したいMIDIチャネルにインスツルメント定義「casio LK520」を紐付けること。これを忘れると意図しないバンクの音に割当てられてしまう。
制限事項
プログラム番号の指定は1から128の番号のみが表示される。インスツルメント定義で「ノート名」を定義すれば「56:トランペット1」のように楽器名を表示できると思ったが表示できなかった。このためノート名リストはDiatonicのままとし、LK520の取扱説明書でバンクとプログラムチェンジの番号を確認しながら1から128の値を選択しなければならない。ちょっと大変だが私としては動けばOKだ。もしノート名の設定ができるようになったらブログに追記したい。
5.あとがき
一週間ほどMIDIと格闘してなんとかSMFでLK520のAIX音源を鳴らすことができた。ピアノを弾くよりもこうしてMIDIファイルを弄って遊ぶ方が私の性には合っているようだ。
これでネットからダウンロードしたSMFに好みの外部ハードウェア音源を割り当てて遊ぶことができる。少し試したところGM音源をAIX音源にすると少し雰囲気は変わるが劇的に変化するわけではなかった。しかし様々な音色で試すだけでも楽しいし、MIDI機能を使いこなしているという満足感は得られる。
MIDI対応の楽器を使えばこれをMIDI入力デバイスとしてLK520の任意のAIX音源(トランペットとかアルトサックスとか)で鳴らすこともできるはずなので今後試してみたい。
私のことだから楽器の演奏練習はすぐに挫折してしまう可能性が高いが、今年一年頑張った自分へのご褒美として購入するつもりだ。こいつは9千円くらいで買えるので安い。AKAI EWI Soloだと6万円するからな~。
ちなみに妻はCDラジカセが欲しいというのでクリスマスプレゼントでこちらもアマゾンで購入予定である。我が家には未だに1970年代、80年代のカセット、CDが捨てられずに残っているのだ。

