シンギュラリティ実験ノート

購入した1000ドルPCで何がどこまでできるのか実験した記録です。

イギリスの郵便局冤罪事件はなぜ起きたのか

昨日の朝のNHKのニュースで、イギリスの郵便局で起きた冤罪事件で被害者となった女性のインタビューを見た。郵便局に導入されていた会計システムの不具合で会計上の残高と実際の残高が一致しなくなり、横領の罪で起訴され実刑判決を受け、収監されてしまったのだ。システムの不具合が原因であったにも関わらず、なぜこのような冤罪事件になるのか。本ブログのテーマとは全く関係がないのだが、個人的に興味を惹く事件なのでメモとして残しておきたい。

イギリスの郵便局冤罪事件とは

この事件について全く知らなかったのでまずはGeminiに聞いてみた。

イギリスで起きた郵便局冤罪事件について教えてください

イギリスで起きた郵便局冤罪事件は、2000年代から2010年代にかけて、イギリスの郵便局員700人以上が、実際には犯していない横領などの罪で不当に訴追された事件です。
この事件の発端は、イギリスの郵便局で使用されていた会計システム「ホライゾン」にありました。このシステムには重大な欠陥があり、郵便局窓口の実際の現金残高とシステム上の残高が一致しない問題が頻発していました。
郵便局側は、この問題の原因を郵便局員の不正行為であると断定し、多くの郵便局員が刑事訴追されました。中には、無実の罪で懲役刑を服役したり、多額の弁済金を支払わされたりした郵便局員もいました。
しかし、その後、独立調査委員会による調査の結果、ホライゾンの欠陥が原因で誤った訴追が行われていたことが明らかになりました。
2019年、郵便局側は被害を受けた郵便局員に対して和解金を支払うことで和解が成立しました。この事件は、イギリス史上最大の冤罪事件の一つとして記憶されています。
この事件は、以下のような問題点を浮き彫りにしました。
・ 会計システムの欠陥が、多くの人々の生活を大きく損なう可能性があること
・ 捜査機関による捜査の杜撰さ
・ 郵便局側の対応の不誠実さ
この事件を教訓として、今後このような冤罪事件が発生しないように、以下のような対策が必要と考えられます。
・ 会計システムの安全性と信頼性を向上させる
・ 捜査機関による捜査の透明性を高める
・ 被害者に対する迅速かつ適切な補償を行う
イギリスの郵便局冤罪事件は、私たちに多くの教訓を与えてくれる事件です。この事件を教訓として、今後このような冤罪事件が発生しないように、社会全体で取り組んでいくことが重要です。

上記はAIによる説明で不正確な部分があるかもしれないが、おおよそ正しいようだ。問題点と対策まで書いてくれているのは大したものだ。

事件の背景

事件が社会問題として報道されるようになったのは数年前からだったと思うが、再び注目されるようになったのは、イギリスのTV局が今年の1月にドラマとして放映したからのようだ。『Mr Bates vs The Post Office』である。

残念ながら日本では未放映だ。どこかの動画配信で見られるなら是非みたいと思っている。事件の背景がそれで理解できる気がするからだ。

私がこの事件で疑問に感じるのは以下の点である。

  1. 残高が一致しないという重大な不具合が修正されないまま運用されていたこと
  2. 捜査関係者、検察官、裁判官が会計システムの問題を疑わなかったこと
  3. 具体的証拠がなかったはずの容疑者(郵便局長)が何百人も有罪になったこと

残高不一致問題

日本の金融機関では通常午後3時に窓口を閉める。それはその日の残高が合うことを確認するためで、1円でも違っていれば銀行員は帰ることができない、というのが日本の常識である(と思う)。私は会計システムの開発は経験がないので詳しいことは分からない。しかし製造現場の在庫管理については経験がある。システムの管理する在庫と現場の在庫が一致しないという問題は実は日常的に起きる。これは基本的に運用の問題で、システムへの入力ミスであったり、システム管理外のイレギュラな運用による製品の移動があると、すぐに在庫は合わなくなる。これを合わせるために定期的に棚卸し、在庫を合わせるために、現場は間違いを探す努力をするのだ。

この作業の前提としてシステムは正しい計算結果を出さなければならない。会計システムのようにお金を扱うシステムでは尚更で、1円でも処理結果が違っていたら大問題になるはずだ。

実際にはシステムに問題があった訳だが、設計、開発、テストのどの段階にどんな問題があったのか個人的には興味がある。また開発請負会社(富士通の海外子会社)と顧客(郵便局)は問題が発生していることを把握しながら何故是正できなかったのかも興味がある。

捜査・裁判関係者の問題

捜査・裁判の段階で会計システムに問題があるかはどの程度検証されたのだろうか。捜査・裁判関係者にもシステムの処理は正しいという思い込みがあったのか。

ここからは私の推測になってしまうが、捜査・裁判関係者の中に会計システムや簿記に詳しい人は居なかったのではないだろうか。日本でも検察官や裁判官になる人は難しい司法試験に合格した人達であるが、簿記の資格を持っている人は少ないのではないか。つまり簿記や会計の仕事は自分には関係ないと思っていると想像するのだ。そうなると開発会社が「会計システムの処理は正しい」と証言したら、それを検証するのは自分の仕事ではないと考えてしまうことが容易に想像できる。

証拠不十分でも有罪問題

証拠不十分なまま有罪にしてしまうことも、日本から見ていると理解できないことだ。これはイギリスという国特有の問題が関係しているのかもしれない。「労働者階級」に対する差別や偏見である。イギリスでは郵便局長も「労働者階級」と見なされる。上流階級や中産階級からは、労働者階級の人間は目を離せばすぐに悪さをするので罰を与えなければいけないといった感覚があったのではないかと想像する。私はイギリス文学を読んだ経験はないので知らないが、妻は英文科で勉強した時に教授からこの「労働者階級」やイギリスの階級社会について教わったそうだ。階級社会のことを理解していないとイギリス文学はもちろん、今回の問題も理解できないのかもしれない。

おわりに

事件の背景を理解するには、やはりイギリスで放送されたドラマを見るのが一番だと思う。民放でなくて、Amazon Prime VideoでもAppleTVでもいいのでどこか放送してほしいものだ。