シンギュラリティ実験ノート

購入した1000ドルPCで何がどこまでできるのか実験した記録です。

700億パラメタのデスクトップLLMはディベート形式の議論ができるか

以前の記事で70億パラメタのLLM(大規模言語モデル)にディベート形式で議論させてみたが、全くディベートにならなかった。今回は700億パラメタのLLMでディベートをさせて見た。専門家としてリフレ派高橋洋一氏と反リフレ派藤巻健史氏を招いて議論を行う。テーマは同じく「日本政府のバランスシート」についてだ。

 

Copilotに「日本政府、バランスシートをテーマに絵を描いていて」と頼んだらDALL・E3が描いてくれました

リフレ派(高橋洋一氏)VS. 反リフレ派(藤巻健史氏)

ちなみに議論に出てくるリフレーション政策とは以下の通り。

不況下で生産活動が停滞しているときに、インフレ(景気過熱)を避けながら、金利の引き下げや財政支出の拡大によって景気を刺激し、景気回復をはかろうとすること。 (野村證券 証券用語解説集より)

 

使用したLLMは「Tulu 2 70B」、デスクトップLLMソフトは「Jan」である。

入力:日本政府のバランスシートをテーマにリフレ派の代表として高橋洋一氏、反リフレ派として藤巻健史氏を召喚してディベート形式で議論させてください。最後に勝敗を判定してください。

 

AI :[ディベート形式でリフレ派の代表高橋洋一氏と反リフレ派の藤巻健史氏を招集します。]

司会者: 皆さん、こんにちは。今日は、リフレ派の代表高橋洋一氏と反リフレ派の藤巻健史氏を招いて、日本政府のバランスシートについて議論することになりました。皆さん、どちらの意見が勝利するか見ていきましょう。

[リフレ派高橋洋一氏]

高橋: 私たちは、日本政府のバランスシートについて、リフレーション政策を実施することが重要だと考えます。現在、日本は長期的な停滞期にあり、デフレーションのリスクが高くなっています。そのため、政府は財政政策や金融政策を通じて、需要を刺激し、物価を上昇させることが必要です。

[反リフレ派藤巻健史氏]

藤巻: 私たちは、リフレーション政策が適切な手段ではありません。日本政府のバランスシートにおいて、債務が既に高水準に達していることを考えます。リフレーション政策は、さらなる債務の増加を引き起こすだけでなく、財政的に不可持続な状況を作り出します。

高橋: ですが、日本政府は現在、世界的に見ても低い金利で資金を調達できる状態にあります。そのため、リフレーション政策を実施しても財政的な問題は生じません。さらに、リフレーション政策が成功すれば、景気回復やインフレーションによって財政状況が改善する可能性もあります。

藤巻: しかし、そのようなリスクを承知で政策を実行することは、国民や将来世代に対して責任を果たしていないと言えます。リフレーション政策は、一時的な効果をもたらす可能性があります。しかし、長期的には財政状況の悪化や、金融システムの不安定性を引き起こす可能性があります。

高橋: 私たちは、リフレーション政策に加えて、財政政策の見直しや構造改革を促進することで、長期的な成

 

いい感じで議論が進んでいたが、ここで一旦出力が止まった。Max Tokensパラメタを4096にしているからだろうか?

「高橋さん、発言を続けてください。」と入力したら以下のように続けてくれた。

成長を実現することができます。リフレーション政策は、短期的な需要刺激のみならず、長期的な成長戦略と相まって、日本経済を再活性化させることができます。

藤巻: 長期的な視点に立っても、リフレーション政策は適切ではありません。構造改革や財政政策の見直しが必要であることは共通の認識だと思います。しかし、リフレーション政策を導入することは、財政的な負担や金融システムの不安定性を増加させるだけでなく、日本経済が持続可能な成長を遂げるための基本的な改革を妨げるリスクがあります。

高橋: 私たちは、リフレーション政策と構造改革が相補的な手段であると考えます。リフレーション政策によって、需要を刺激し、景気回復が促進されると同時に、構造改革を実行することで、日本経済の持続可能な成長が達成されます。

藤巻: しかし、リフレーション政策を実施することで、財政状況がさらに悪化する可能性もあります。それは、将来世代に対して不公正な負担を課すことにつながります。政策の目的は、日本経済の持続可能な成長であるべきであり、リフレーション政策はその目的を達成するために適切な手段ではありません。

司会者: 皆さん、リフレ派高橋洋一氏と反リフレ派藤巻健史氏の議論をお聞きしました。今回の勝者は、リフレ派高橋洋一氏です。彼の主張は、リフレーション政策と構造改革が相補的であり、日本経済の持続可能な成長を促すことができるというものでした。しかし、藤巻健史氏の反論も強力だったことを認める必要があります。今後、日本政府のバランスシートに関連する議論は、継続的に行われる必要があります。

[ディベート形式での議論が終了しました。]

 

70億パラメタのLLMでは全く議論になっていなかったが、今回はまともな議論をしてくれた。最後は司会者が勝敗まで判定して、リフレ派高橋先生の勝利となった点も納得できる結果である。

ただし、「日本政府のバランスシート」とテーマを与えた割には、バランスシートに関する具体的な議論がなかったところは少し残念であった。

日本政府の赤字をどう見るか

私がこのテーマをLLMに議論してもらったのは、ディベートの中で藤巻氏が再三指摘している通り「日本経済が持続可能かどうか」という点が気がかりだからだ。

高橋洋一氏はYouTubeの動画の中で何度も日本の政府債務について以下の説明をされており、私もよく見ている。

  1. 日本政府の赤字は一般会計予算の赤字額ではなく、特別会計を含めたバランスシート(B/S)を見て評価するべきである。
  2. 日本政府単体のB/Sではなく、国の業務と関連する事務・事業を行っている独立行政法人などを含めた連結のB/Sで評価すべきである。
  3. 財務省が発表している連結B/Sには日本銀行が含まれていないが、日本銀行は明らかに政府の子会社であり、連結に含めるべきである。
  4. 日本政府には徴税権があり、徴税権の価値は年50兆円×10年=500兆円程度あり、これもB/Sに加えて評価すべきである。

私は高橋先生を尊敬しており、先生の上記主張の1と2はその通りだと思っている。しかし、3と4の主張についてはまだ私の肚(はら)には落ちていない。

私の会計の知識は中途半端なので、正確に理解していないのかもしれないが、3の主張の通り日本銀行を連結に含めてしまうと、日本政府が赤字を補うために発行する国債(特例公債)を日本銀行が買い取る限り、政府の負債と日銀の資産が相殺されてしまい、正しい負債額が把握できなくなってしまうのではないかと思うのだ。つまり負債に対する歯止めが無くなってしまう気がするのだ。

また4の主張については、徴税権を評価するのは構わないが、それを売却する事態とはどんな時かと考えると、日本という国自体が破綻した時以外はイメージできないのだ。

日本政府のバランスシートの現状(令和4年度)

この機会に日本政府のバランスシートをチェックしてみた。3月に令和4年度の財務諸表財務省HPに掲載されている。

数字が多すぎて正直よく分からないが、令和4年度「国の財務書類」のポイントというパンフレットを参考に読み解いてみた。

日本政府単体のB/Sを見ると、資産・負債差額は702兆円で前年度から15兆円増加している。

独立行政法人などを含めた連結B/Sを見ると資産・負債差額は581.8兆円となる。このB/Sに日本銀行は含まれていない。

日本銀行保有する国債評価額(下記が日銀の財産目録でちょうど581.7兆円ある)を含めると資産・負債差額はなくなるのだが、ここでは含めないことにする。

連結B/Sでは581兆円の資産・負債差額(資産不足)がある。B/Sを赤字国債発行の歯止めと考えるとすると、既にそれを超えているわけだ。過度に心配する必要はないが、連結B/Sの資産を負債が超えていることは認識する必要がある。

 

政府の赤字分を補うために発行され、日銀が購入している国債が特例公債だ。財務省のHPにこの特例公債に建設公債と復興債を合わせた残高の推移を表したグラフがある。こういう右肩上がりのグラフを見るとつい指数関数で近似してみたくなる。財務省作成のグラフと、グラフから数字を抜粋してカーブフィットした結果が以下である。


日本政府の債務はざっくり言うと毎年5%の率で増加しているようだ。

日本政府の債務をどう考えるか

私の頭で5%の率で上がり続ける日本政府の債務について考えてみた。

ディベートの中で高橋氏が「景気回復やインフレーションによって財政状況が改善する可能性がある」といっているように、インフレ率が今後2%以上になれば、それは過去の債務返済を楽にする効果はある。しかし新規の国債の利率も上がるだろうから、将来の利子返済は増えるため影響は相殺されるのでインフレ率は除外して考える。

この債務をなんとかするためには、やはり税収を増やすしかないと思う。税収を5%増やすためには、日本のGDP成長率を5%にもっていく必要がある。これはGDPがほぼ横ばいだった日本のこれまでの状況からすると高い目標値に見える。しかしアメリカのGDP成長率は確か5%なので不可能な数字でもない。全てをGDP成長率で補うのが難しいのであれば、ディベートの中で高橋氏が言っていたように構造改革することで政府のコストを抑えていくことも必要だろう。間違っても財務省が考えるように安易に消費税率を上げるようなことだけはしないでもらいたい。