9月18日の日経新聞に「高齢者の金融資産、60代単身世帯の3割ゼロ 物価高響き二極化」という記事が掲載された。
説明のため記事の冒頭を引用する。
日銀は18日、家計が保有する2025年4~6月期の金融資産が前年同期比1%増の2239兆円で過去最高になったと発表した。60歳以上の世帯が6割前後を保有するとみられるが、物価高と株高の影響で高齢者世代の資産額の二極化が進んでいる。
私は日経新聞を購読していないのだが、内藤忍氏のブログ記事でこの記事を知った。
金融資産が2239兆円もあり、60歳以上の世帯がその6割前後を保有しているのに、金融資産を全く保有していない60代世帯が3割もあるというのは、いくら格差が広がっているとは言えちょっと多すぎないか、というのが正直な感想だった。
そう思って日経新聞掲載のグラフを眺めているとグラフの縦軸の数値が一部間違っていることに気づく。1000~1499とすべきところを100~1499としている。小さなミスなのだがこういうミスがあるとグラフの数値自体も本当に正しいのかと疑ってしまうものだ。(グラフは上記ブログから。オリジナルは日経新聞)

グラフ下に「単身世帯」と注釈が付いている。60歳代の単身世帯に絞った調査結果のようだ。データ出所は「金融経済教育推進機構(J-FLEC)」。興味のある内容なので自分でデータを検証してみることにした。
データ出所
金融経済教育推進機構(J-FLEC)のHPがこちらにあった。HPで「金融資産 統計」とキーワードを入れて検索すると以下のページが見つかった。
家計の金融行動に関する世論調査 2024年 | J-FLEC 金融経済教育推進機構
上記ページに以下の3種類のデータが掲載されていた。
- 二人以上世帯
- 単身世帯
- 総世帯
日経新聞は上記の「単身世帯」のデータを使ったようだ。結論から言うと60歳代単身世帯のデータは日経新聞のグラフの通りだった。このデータだけを見ると確かにインパクトがある。
しかし「単身世帯」だけでなく「二人以上世帯」や「総世帯」のデータも併せて見るべきだと思うので、説明のため上記3種類の60代世帯データをまとめて引用する。(単位:%)
分析
データが集まったので「二人以上世帯」「単身世帯」「総世帯」それぞれを円グラフで表示してみた。
二人世帯以上と単身世帯で極端な違いはないのだが、二人以上世帯は単身世帯ほど「資産ゼロ」は多くないし、3000万円以上の世帯も20%ある。
しかし単身世帯の金融資産の保有状況が二人以上世帯に比べて厳しい状況であることは確かなようだ。インフレは更に続くだろうから60代総世帯でも日経新聞が言うように「二極化」が進むことになりそうだ。



感想
以前に「老後2000万円問題」が騒がれたことがあった。総世帯で見ると、四世帯に一世帯(26.4%)が金融資産2000万円以上、四世帯に一世帯(22.6%)は金融資産ゼロ、二世帯に一世帯がそれら以外ということになる。
60代ならまだ働けるし年金が貰える人もいるだろうから金融資産ゼロと言っても直ぐに生活が困窮することにはならないだろう。しかし四世帯に一世帯が金融資産ゼロというのは厳しい現実だ。
ちなみに日経新聞も社内でグラフ目盛りの間違いに気づいたらしく、9月22日に訂正記事をネットにアップしていたのでここにも貼り付けておく。何故か「60代の3割がゼロ」というタイトル文字も小さくなっている。データを精査した結果、煽りすぎだと思って見直したのかな。
